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プロボクシング主要4団体世界スーパーバンダム級統一王者の井上尚弥(31・大橋ジム)とWBC世界スーパーバンタム級1位のルイス・ネリ(29・メキシコ)が5月6日、東京ドームで対戦する。井上尚弥が26戦26勝23KO無敗に対し、ネリが36戦35勝27KO、1敗という戦績だ。ネリは唯一、2021年5月に行われたブランドン・フィゲロア戦で、KO負けを喫した。東京ドームでのボクシングの興行は、1990年2月11日に行われた、マイク・タイソン対ジェームス・ダグラス戦以来34年ぶり。日本人がメインイベンターを務めるのは初めて。モンスター井上はこの試合で初めて4つのベルトを掲げて入場する。
井上尚は4月10日、大橋ジムで報道陣を前に、シャドー、ジャブ、ストレート、フックのサンドバック打ちを公開した。練習前の会見では、ネリについて「危険やリスクも大きいが、白熱した試合が出来ると思う。以前のタパレス戦より驚く結果が期待できる。それは、どっちに転んでも言えることで本当にハラハラした試合になる」と話し、父の井上真吾トレーナーも「向こうがラフファイトにきても、尚弥がしっかりいければ、自分の中では全く不安はない」と語った。
ネリのイメージを問われた井上尚は、「攻撃面に目が行きがちだが、打たれ強さもある。荒々しいボクシングの中でのディフェンスなど細かいうまさがある。実際に前に立った時の空間もうまい」と話し、対策としては、「自分の距離感をしっかり当てはめること、また接近戦でも距離をとっても戦える準備をしている」と言明。攻撃的な相手に対して、「意識的にどう潰すか。足で外すのか、逆に攻撃でつぶすのか。色々なパターンを想定して、両方出来る準備をしている」と分析した。
一方のネリは21日、羽田空港に降り立った。日曜日の昼間ということもあり、空港は騒然としたが、約9分間、報道陣の質問に答えた。「井上選手はスピードがあってパワフルで才能があると思うが、私の方が勝っている。(井上尚を)パウンド・フォー・パウンドのNO.1とは思わない。井上選手をリスペクトしているが、彼を恐れてはいない。KOする」と豪語し、一緒に来日した妻と娘3人と共に空港をあとにした。
ネリは2日後の23日、帝拳ジムで報道陣を前に、シャドー、トレーナーを相手にフックやアッパーのコンビネーション確かめた。会見では「私だけでなく、井上選手にとっても厳しい試合になる。両者とも、勝つ可能性はある。しかし私はメキシコ人。リングの上で死ぬ覚悟だ」と捨て身で戦うことを宣言して会見を終えた。
パンテラ(黒ヒョウ)の異名を持つネリは、井上尚がこれまで対戦したボクサーの中で最も手強い相手とされる。だが、井上尚は「5万人近いファンの方の声援は、自分にとってかなりプラスに傾く、その声援を背に、とてつもない試合をしたい」と言い切った。
所属する大橋ジム・大橋会長は「実力で井上尚が東京ドームで試合をするのは、日本ボクシング界にとても大きなこと」とコメントした。日本ボクシング史上最強の4団体統一王者は、ホワイトタイガーをモチーフにした衣装をまとい、黒ヒョウを迎え撃つ。5月6日、東京ドームで劇的な勝利をおさめて、所属する大橋ジム創立30周年に花を添え、日本ボクシング史にまた新しい歴史を刻むのか。世紀の一戦は、6日午後5時よりAmazon Prime でライブ配信される。
筆者:佐藤新